2025年3月 「小説とAI」

イギリスでは今、日本の小説が翻訳部門売り上げの4割を占め日本小説が英国を席巻しているという。ケンブリッジ大のビクトリア・ヤング准教授によると「日本作家といえば村上春樹さんのイメージはまだ強いが、直近では女性作家の作品が人気だ」。世界的な権威のある英国の文学賞「ブッカー賞」の翻訳書部門「ブッカー国際賞」には、20年に小川洋子の「密やかな結晶」、22年に川上未映子さんの「ヘヴン」が最終候補に残った。小川洋子はノーベル文学賞候補にもなっている。日本の現代文学を読むことはイギリスでは、洗練されたファッショナブルなイメージがあるのだそうだ。

 

第170回芥川賞を受賞した九段理恵の「東京都同情塔」はその5%をAIが書いたということで話題になった。


主人公は建築設計事務所勤務の37歳牧名沙羅。東京オリンピック2020の新国立競技場のデザインは、ザハ・ハディド氏の設計に決定したが、その後工事費などの問題で白紙撤回され、隈研吾設計による新国立競技場が建設された。小説「東京都同情塔」では、ザハ・ハディド設計の競技場が完成され2020年には東京オリンピックが開催されていることになっている。その新国立競技場の隣に現代版「バベルの塔」と言うべき犯罪者を収容する超高層塔を建設することになる。この塔の名前が「シンパシータワートーキョー」、同情されるべき人々(ホモ・ミゼラビエイス)だ。

 

初めに、人間の思い上がりから神の怒りをかい放棄せざるを得なかった「バベルの塔」について語られ、最後に同情塔を完成させたことを後悔することで結ばれる。AIを頼って自分の心を言葉で騙していたことが間違いの根本的原因だったと気づき、塔が破壊される未来を幻視することになる。

この小説は、「全体の五パーセントは生成AIを利用して書いた」として話題となったが、主人公は生成AIと対話しながら建物の構想や設計を進めている。 AIが書いたと思われる文章はゴシック体で挿入されている。

 

「次回は95%をAIが作る作品を作ってはとのどうか」との提案を受け、芥川賞作家による次の挑戦が始まった。
最初のテーマ設定や話の展開はすべてAIに提案させ、作者はAIに意見を出したり方向性を指示したりしながら執筆を進める。冒頭と文末の文章について作家が提案し、修正を加えて2週間ほどで完成させたとのことだ。博報堂の雑誌「広告」にはこれらの制作過程の一部も公開されている、というので早速雑誌を予約した。

 

私は、ChatGPT 初心者だが、便利なツールでこれからは色々な方面で活用されるだろう。1年ほど前に漢詩を色々と試作した。今年もトライしてみたが、この1年でAIがスキルアップしていたのは嬉しいことだった。AIの作成したものに自分らしさを加えて再度試作してみた。今月末の日曜日、私たち夫婦の喜寿の会と孫の中学入学を祝う会を開いた時に、作成した漢詩とそれぞれの誕生日の花言葉にメッセージを添えて手渡した。 漢詩は、それぞれの名前の一字「泰 美 光 令 徳 志 樹 勇 智 実 梨」を組み合わせてのAIとの共作となったが、末永く心に留めたい美しい詩になった。

 

「新たな挑戦としてAIとの共作を引き受けたが、人間がフィクションを想像する本質的な意味について考え直すきっかけになった」という九段理恵の言葉に共感した。「東京都同情塔」は、10か国以上の言語で出版される予定である。